日本大学(以下日大)が揺れている。昨日理事長、学長、副学長が揃って記者会見を開き釈明し、記者の質問に答えた。TV(私が見たのは日テレ)では最後まで放映しなかったので、大学側の説明が十分なされたか確認できないが、それを見ながら幾つかの疑問を抱いた。間違っていたらお許しいただきたい。

 当事者ではないが、薬物問題の深刻さを世田谷区の広報誌(世田谷区出版「スクラム防犯」。ぜひご一読下さい)を通し、その危険性(特に若者間の)を市民に強調してきた者として、大学側の説明に見過ごしてはならない大きな問題があると感じた。

 この問題は日大だけでなく、今の若者、彼/彼女らを教育する大学の在り方、ひいては日本の将来に深く及ぶ。日本大学の在学生、卒業生にも邪推が及びかねない。それではあまりにも彼/彼女らに酷く悲しい。全員まじめすぎるほどに真面目で勿体ないと表現できる若者たちである。傷つけてはならない、と深く思う。しかし大学の説明を聞いて、この問題についての疑問(日大の危機)を感じた。過去に学ばないものは繰り返す。日大は今後も同種・異種の問題を繰り返すかもしれない。その危険性を内包する。疑問の幾つかを記述する。

疑問1:薬物問題等が部活の建物内で生じていることを大学が通報で認知した時、なぜ時間を置かず        

    に,その事を即、確認に寮内に入らなかったのか?警察に通報しなかったのか? 本人の

   「自主的届け出」を待ったという。そんな温情の問題ではない。これは許してはならない、

   ましてや若者の集まった「あってはならない」高等教育機関の場での犯罪である。

疑問2:なぜ、例えばあれほどの時間を置いて学生に所持しているかを確認したのか?もし

    所持していたとしても被疑者(複数かもしれない)は、これほどの時間があれば「それをい

    ち早く処理」し、問題なしに始末してしまうことができたであろう。

     大麻や覚せい剤、特に覚せい剤はトイレなどで水に流せばよい(よくTVや映画でやって

    いる)。時間を置けばそうするのは非常に簡単。流したものを確認するには、よほど徹

    底した捜査(現場検証。下水管・下水道を調べる等)が必要。

     流さなかった、その可能性を徹底追及し、学生にも「どうだ?」の追求をしたのか?。

疑問2:大麻と覚せい剤では、問題の深さが違う。そのことを判っていたのか?知っていたのか?

     大麻はアメフット部のグラウンドでも栽培し入手できる。簡単。しかし覚せい剤は化学

     的合成物で、それなりの知識・装置が必要となる。合成の過程で酷い異臭もする。おい    

     それと入手できるものではない。科せられる「刑罰」も格段に違う。そのことは、元東

     京地検に検事として在籍していたという副学長も常識的によく知っていたはずだ。

     薬物事案を犯した場合、内容により生涯、陰に陽に警察に付け回される。社会的にも

   「薬をやった奴」とラベルが張られ続ける。しかしTVを見ていると覚せい剤より「コナのよ

    うな大麻問題」にピントを合わせさせようと目に写ってならない。問題は違うのだ。極め

    て微量(耳かき程度の量であっても)でも覚せい剤。それが大学の寮に持ち込まれていたと

    いうこと。

     大麻より覚せい剤の個人及び社会的犯罪的問題性はるかに深い。微量かどうかの問題で

    はない。この薬物は常習化しやすく、そこから抜け出すのは容易でない。精神錯乱の異

    常行動も出現する。挙句の果ては重大な交通事故や事件(例えば深川通り魔事件)を犯す。      

     さらにこの薬物の背後で、購入のための多額の金銭問題、人間関係の切断と絡み、

    家族全員の崩壊等が生みだされている。多くの少女売春の背後には覚せ剤の常用がある。 

     この薬物の入手には、厳しい取り締まりの目を逃れる必要上、国内のみならず外国(その

    方が多い)の反社会的集団との細いしかし切れ目のない網の目のようなつながりを要す

    る。彼らにとっては金になる。たかが一人の学生が持っていた、という問題ではない。

    そういう組織とつながりのある人物が入っていたということは、そういう組織が大学に少

    数の人間を通し入りこんだ、ということである。彼らは、一歩入りこめば遠慮容赦なくヅ

    カヅカと入りこんで来る。日大は、日本有数の学生・卒業生をかかえたマンモス大学であ

    り,日本社会の根底を支える高等教育機関である。そのことを自覚しているのか。

     日大には、こうした問題を扱う専門学部(危機管理学部)があり、薬物を扱う医学部が

    あり、さらにはこうした問題に通暁した法学部がある。そうした学部の教員と相談しなか    

    ったのか?したとすればどういうアドバイスがなされたのか?なかったとすればこれも問  

    題。10日間以上も「自主的な届け出」を待つ間にも、この問題の深刻さを学び感じ取るこ

    とはできなかったのか?警視庁も絡んでいるという。問題の「責」を他者に譲るな。問題

    の重大性を矮小化するな。教育以前の問題である。常識的には信じられない。

疑問3:大麻・覚せい剤濫用は、残念なことに今や全世代を通じて共通文化化しつつある。特に覚せ

    い剤の共通文化化は許してならない。しかし残念なことに覚せい剤の「集団利用」は進行

    しつつあると診られる。複数の人間(若者)の共通文化ということは、一人で「打つ・吸

    う・食う・塗る」のでなく、気の許せる仲間と学習しあい(楽しい学び)、外部の目の届か

    ない気の許せる場所で、気の許せる時間に体内に取り入れる。そうやって仲間を増やす。

     今回の日大アメフット寮の場合、そういうことはなかったか?視察の時、所持していな

    かっただけで「打つ・吸う・食う・塗った」者はいなかったか?やったのは一人だけか?

     個人的に他は「いなかった」と言いたい。しかし日大当局はそれを確認したのか?私た

    ちに断言できるのか?所持していたと判明した個人だけなのか?犯罪行動生態学的には、

    表情は隠せても、眼や口元・手先・肩元、足先等の微かな震え、ねじれ、たるみ、固ま

    り、言葉のつまり、よどみ、繰り返しなどは心のウソを映し出す。警察の取り調べ官は極

    めてかすかな動き、あるいは動くべき時に動かないこと等に黙って、しかししっかりと目

    と心を注ぎ、決して見逃さない。今回も彼らはTV等等を凝視し、小声で確認しあっている

    はずである。捜査のプロ。彼らはどう見てどう判断したか。少し時間を置いて組織として

    答えを小刻みに出してくるに違いない。彼らはその時黙ってはいても決して忘れない。

     再度いう。問題は、若者集団内の「覚せい剤」である。大麻とは問題の深さが違う。

     もし、そのこと(隠れた所持者の存在)がこれから出てきた場合、日大はアウトであ

    る。今後秘かな内部通報もありうる。大切な友人たち、私の叔父も日大卒業生である。  

     時代は一時逃れの効かない、効かしてはならない時代に入ってきている。ひょっとす

    るとこの問題は、今のこれからの日本の「危機の時代」の表徴なのかもしれない。

     疑問はまだある。しかしこの読みはここでやめる。皆さんの遠慮のないご批判をいた

     だきたい。

    (文責 清永賢二        2023年8月9日)