11月24日朝突発したこの事件を巡っては、これまでに様々な原因が多様な分野の人々により語られてきました。しかしこれといった納得行く「読み」には成っていません。取り調べでも満足行く答えが見つかっていないようです。その結果、最終的に「明確な原因は掴めない(捜査関係者)」、「これといった理由を挙げるのは難しい(大学関係者)」等とお手上げの状態にあることがマスコミに流れています。
筆者のところにもある週刊紙から「どう考えるか」の問い合わせがありました。それに対し「まだ十分な情報が得られておらず回答できない」と述べました。その後読みを重ねました。決定的な鍵となる情報は未だ得られませんが、この文章は、その読みの答えです。
私は事件後の少年の心の流れ(心象風景)を次のように読みます。
➀事件前:
(誰にも言えない表現できないチクチクとした苛立ち、将来への不安の蓄積)
あ~面白くない。
良い子の仮面を被り続けることには、もう疲れた。
先生もみんなもオレを小馬鹿にしている(見下している、仲間はずれにしている)
爆発したい、みーんな捨ててしまいたい。
②刺す前:
誰でも(別に伊藤君でなくとも)良かった。
③伊東君と廊下で向き合って:
(いくつかの言葉のやり取りを経て)
この野郎、オレをなめてるのか!
やってやろうじゃないか(刺すこと自体が目的化)!
④刺した直後:
おれをなめるとこうなるのだ。
まあたいしたことないだろう。
⑤一定時間を置いて:
エー、たいへんだ。たいへんなことしてしまった。
どうしてこんなことしたんだろう。
死ぬなんて思ってなかった。
⑥そして今:
(何とはなく)ホッとしている。
どうでしょうか。
こうした言葉(思い)が紡ぎ出される背景(原因)として大きく5つの要素(並列でなく前後に置かれた鍵言葉の連なり)の存在が考えられます。
言ってみれば今回の事件は、単一の原因では説明のつかない、幾つかの原因が縒り合わさった「複合殺人」だと考えられます。流れ、絡まり合いとして考えねば解けない事件です。
(文責 清永奈穂 2021/12/07)