<はじめに>

 最近の犯罪学関係、特に犯罪者の行動に関する著書、論文を読んでいて痛感したことがある。多くの著書、論文が欧米の専門著書、論文を基に、その説からの視点で日本の現状を分析、解釈そして近未来社会を説明している。横文字世界の縦文字化世界。

 そのことが必要でない、というのではない。

  しかし犯罪というのは、個性的で、その時代、その時間、その社会、その文化、そしてその個人特性に影響される現象である。横文字化だけですむものではない。

犯罪を読み解くには、ささやかな日本独自の視点、日本の現実を見る目の上に立った犯罪学、犯罪者行動論、そして犯罪予防論や犯罪危機管理論が確立され提唱される必要がある。

  そういう視点に立って論者たちは2007年以降、一冊の本を著そうとして来た。

  本稿は、その粗稿を押さえ、それに最近の犯罪状況を加え、日本の犯罪現象及びそれを読み解く犯罪学のこれからを、可能な限りという前提で、俯瞰してみよう。

 何が変わったのか、どう変わったのか、そしてその変化はどこに向かうのか、何がその変化を促したのか。

(文責 清永奈穂 清永奈穂          2024年3月28日)