「市民が日々遭遇する可能性の高い危機の実態把握とその最適な問題解決策」を確かなものとするための調査・研究そしてそれに基づく様々な提案をおこなう研究所です。

体験型安全教育プログラム内容

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犯罪からの子どもの安全教育

体験型安全教育プログラムで安全基礎体力をつけよう!

(本プログラムとその効果測定の研究が2012年キッズデザイン賞優秀賞(キッズデザイン協議会会長賞)を受賞しました)

防犯ブザーはどこにつけたらよいのか?

走って逃げろ!といってもどこまで逃げたらよいのか?

大声はどのくらい出せばよいのか?

そんな疑問にお答えします。

私達は大学研究者とともにおこなった「子どもの安全」科学的研究をもとに体験型安全教育を行っています。

写真左より3枚目まで 文京区内での防犯教室のNHK撮影風景、一番右 ワークショップコレクション2011

弊所は「安全基礎体力プログラム」(下記表)を用い様々な発達段階にそった内容で、体験的な安全教室を行ってきました(研究所内子どもの安全教育グループACE 2006年より)。2012年からはNPO法人体験型安全教育支援機構が主体となりこのプログラムを使用し、安全教育を実践しています。

体験型安全教育のプログラムは、2002年からつみかさねて実施してきた実験に基づき作成されています。

大声をどのくらい出せば良いのか、どの位置に防犯ブザーを付ければならしやすいのか、犯罪者のどれくらい手前から走り出せば捕まらずに走りきれるのか、といった実験を重ね、プログラムを作って参りました。実験の様子は、NHKにより記録され、「防犯先生の安全基礎体力作り」(DVD)となっております。また実験を行った、弊所特別顧問である清永賢二元日本女子大学教授、協同研究者の日本福祉大学田中賢准教授、積水ハウスは2004年に「通学路における子どもの犯罪からの危機回能力調査」を実施、第3回キッズデザイン賞リサーチ部門を受賞しました。

この調査によって、子どもがランドセルを背負ってどのくらい走ればよいのか、どのくらい大きな声を出して助けを呼べばよいのかが明らかになりました。

弊所は、特別顧問清永賢二教授の指導のもと、2005年に日本で初めて、「体験型教育プログラム」を作成し、

「ランドセル背負って走ってみよう」や

「身振り手振りで大声コンテスト」

「いきませんっていえるかな?」

など、体験をくりかえすことによって身につけるプログラムを使用しています。

ランドセルを背負ったまま走る、そしてただ走るのではなく、20メートルは最低は知らなければならないなど、今では沢山の場所でなされている「20メートルランドセルダッシュ」は、弊所が日本で初めて実験を行い実施したプログラムです。

その様子は、NHK週刊こどもニュース「通学路が危ない!自分で自分を守る方法をみにつけよう」(2010年11月28日放映)、NHK首都圏ネットワーク「子どもを犯罪から守るために」(2012年3月23日放映)、NHKこども手話ウィークリー(2012年4月1日)などでも紹介されています。

1.歩く練習 昼間 ・20メートル前を意識する大切さがわかる

歩道時の心構えがわかる

のできかたのいがわかる

道路が明るくてもあぶないことがわかる

2.すれち

がい練習

すれちがう ・すれちがう人との「」がどの位か(その人の身長×0.8)がわかる

・目はどの位前をみておくかがわかる

3.キッパリ練習 キッパリとことわる ・キッパリとことわるやり方がわかる

・立ちどまること-後ろへ歩くことがわかる

ことわれない時は ・知っている人からの「さそい」をことわる

・「目で見る」のも言葉だということがわかる

4.防犯ブザー練習 ブザーの位置 ・ブザーをつけるのはどこがよいかがわかる

・「ゆれない」ひもの長さはどの位かがわかる

引き(ぬ)くタイミング ・いつ引き抜くかのタイミングがわかる

・まちがって引きいた時の謝り方がわかる

5.大声出そう練習 大声を出す ・大声はどの位かがわかる

・大声と手足をすことができる

6.だきつかれ練習 前からつかまれた ・体をいきおいよくふる振る大切さがわかる

・「かみつく」勇気の大切さがわかる

後ろからだきつかれた ・「1.2.3ダッシュ」の意味がわかる

道路に「横たわる」大切さがわかる

7.走ろう

練習

4メートルから走る 4メートルを走る大切さがわかる

・ランドセルや持ち物をすてて走る大切さがわかる

6メートルを走る ・6メートルを走る大切さがわかる

・20メートル走る大切さがわかる

飛びこむ ・家やお店に飛びこむ勇気の大切さが」わかる

©清永賢二 子どもの安全教育グループACE  禁転載

体験型安全教育プログラムに関して

「安全基礎体力」を構成する基礎中の基礎プログラムは、以下の表のような行動形成から構成されています。

このプログラムの気を付けねばならないことが4点あります。

①この行動プログラムは、さらに追加されて行くものです。

②この中は「子どもの発達段階」によって並べられています。

年令だけでなく、まさに子どもが持っている能力の違いが踏まえられています。

そのためには、あらかじめ「その子どもがどの位の潜在的な安全基礎体力」を診断します。

その診断表も使用し、プログラムを行っていきます。

③子ども達に「なぜ20メートル走らねばいけないか」「なぜ灯りがぼんやりしたところは危険か」

の根拠を教えています。

たとえば「暗いところでは10メートル離れて顔が薄らボンヤリ見えるところは注意しなければいけません」が、

何故10メートルか、薄らボンヤリとはどの位の「明るさ」かが示されねばなりません。

根拠のないことを「感」で説明されてもしようがないのです。

④この表に示された「大きく7つの項目」を乱暴に取り出し実施したとしても、安全基礎体力の向上にはさほどの効果はありません。子どもを前もって診断し、どこを伸ばせばよいかを良いかを中心「その子の能力」にあったメニューがつくられねばなりません。そのために②の診断表の開発がなされています。

この表の他にも「不審者」「危ない場所」「被害に遭いやすい子」「被害遭遇時の対応」「変な誘いを上手に断る方法(Social Skill Training for Critical
Situation=SSTfCS
)」
などのプログラムが、各種調査結果、元犯罪者たちの協力を得て完成しました。

子どもの安全教育グループACEでは、このベースとしてこのプログラムを用い、それぞれの地域、学校、学年、子どもたちのニーズに合わせて、授業を組み立ててきました。現在は、研究、研究プログラムの開発をステップ総合研究所が行い、実践をNPO法人体験型安全教育支援機構が行っています。

写真左 文京区内小学2年生セーフティ教室(2011年5月)  右 犯罪者のやる気の変化

体験型安全教育のベースにあるのは科学的な研究と発達段階に沿ったプログラムです

危機に遭遇した子どもの行動を分析

私たちは子どもの危機遭遇時の行動について研究しています。

最近では子どもが危機(待ち伏せ、声かけ、連れ去りなど)に遭遇した時に

児童がどういう行動を取ったかを調査しました。

日本女子大学清永研究室が行った全国調査(6000人対象)では、

危ない目にあった子どもの内、

「走って逃げた」児童が47%と最も多い、という結果が出ました。

しかし、その一方で、何も出来なかった」児童が20%も存在し、

また「大声で叫んだ」子どもは約2%、

「ブザーをならした」が約1%しかいない、という事実も明らかになりました。

(日本女子大学2007年調査)

私たち大人は、子どもが大きくなって自分で自分を守れるようになるまで、

どんな子どもでも見守らなければならない義務があります。

そのためにも、私たちは、見守る大人に

「子どもとはどういうものか」

「犯罪はどこで起こるのか」

などを知っていただきたいと思っています。

その一方で、子どもたちにも、自分の身を守る知恵と知識、そして勇気をもってた子どもに育てていきたいと思っています。

つまり「大人力」をつけた子どもに育てるということです。

この大人力も含めた、安全のために必要な力を「安全基礎体力」と呼んでいます。

写真上  地域のおまつりにも子どもたちがたくさん参加。こういったことが安全な街づくりにつながっています。

写真下 ワークショップでの声かけのロールプレイングでの様子。(写真撮影 すべて清永奈穂)

安全基礎体力とは?

安全基礎体力は、「コミュニケーション力」「危機に対する知恵と知識」「体力」、

そして「大人力」の4つの力を意味します。

安全基礎体力をしっかりと身につけ、

のちに、自分だけでなく、周囲の見知らぬ人まで助けられるような、

そういった一市民としての人間力をもった人に育ってもらいたい、

私たちはそう思いながら様々なところで、防犯教室・講演会をおこなっています。

安全基礎体力
安全基礎体力

©清永賢二 2008

0歳からの安全基礎体力 (清永賢二「防犯先生の安全マニュアル」(東洋経済新報社 2008)
0歳からの安全基礎体力 (清永賢二「防犯先生の安全マニュアル」(東洋経済新報社 2008)

安全教育プログラムに欠かせぬ犯罪者の行動分析

何故この場所で、この子が狙われたのか。それにはほとんどの場合理由があります。

犯罪者の行動を分析することでその答えは現れてきます。

犯罪者の行動空間、犯罪者が子どもを狙っていく距離、犯罪者の好む街、犯罪者の好む子ども等を

研究しつくした弊所は、この研究を防犯教室に取り入れています。

犯罪者の行動を知り、そこからどうすれば防げるのかを考える。子どもの防犯には欠かせない視点です。

たとえばコワイことがあったら走って逃げろ!といいますが、どのくらい逃げればよいのか。

それには、犯罪者が、狙おうと思った子をどのくらい追いかけたらあきらめるかを知らなければなりません。

私達は、弊所が行った犯罪者行動生態調査データに基づき、

「20メートル」と教えています。

このようにどのくらい前から犯罪者は狙っているのか、どのようなことをされると犯罪者は犯行をあきらめるのか、

犯罪者の行動から学べることは多いのです。

たとえば子どもの視野を知る

また、大人の方々に子どもの体力、身体能力がどのくらいか体験していただくことも重要なプログラムとしています。たとえば「子どもの視野」、「子どもの走る力」等実際の子どもの状況を体験していただきます。

その際に使用するのがたとえば「チャイルドビジョン」という道具です。子どもの視野を体験できる便利な道具です。

チャイルドビジョンは、スウェーデンの児童心理学者、スティナ・サンデルス氏が唱えた「子どもの認識能力に基づく視野角は狭く、上下の方向に70度、左右の方向は90度」という説を体験できるよう、横浜市が1982年、デザイナー寺田松雄氏とデザイン会社の協力で作成した交通安全啓発グッズです。

交通安全教育で使われていたものを、防犯教育でも、と顧問清永の発案で、2007年から私たちの防犯教室でも使用しています。(HONDAチャイルドビジョン と 東京都版チャイルドビジョンの型紙は下記からダウンロードできます。)

 大人の視野はそれぞれ120度、150度ありますが、大人がチャイルドビジョンをかけると、上下左右とも、視野が通常の半分ぐらいになります。

このような体験を通して、子どもがいかにみえていないか、そしてただ「キョロキョロしてはだめよ」としかるだけではいけない、ということを大人の皆さんにも体験を通して感じていただきたいと思っています。

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