「0歳からの安全教育」~危機を通して子どもを大人にする安全教育~
ステップ総合研究所は、「0歳からの安全教育」の研究・実践を行っています。
1.子どもの安全教育カリキュラム第一案の誕生
子どもの安全教育は、特に犯罪からの安全に関しては、
カリキュラムに沿って行われることなくまた発達段階に沿うことなく行われていました。
しかし、その状況をあざ笑うかのように、
子どもへの犯罪は減ることなく、悪質になっています。
そこで、いままでの対処的対応ではなく、
教育的に長いスパンで安全教育を行う必要がある、
との考えで、安全教育カリキュラム案の第一案は、清永が2005年に作成いたしました。
このカリキュラム案の作成には以下の5つのことが原則として考えられました。
(1)生まれた時から安全教育カリキュラムは始まります。
(2)そして、このカリキュラムは、概ね15歳(義務教育年齢)で目的を遂げ、(安全基礎体力の形成)終了すると考えます。
(3)このカリキュラムは子どもの発達と個性を踏まえて安全教育はなされなければなりません。
(4)子どもの安全基礎体力の体得には順番があります。
(5)安全教育カリキュラムの最終目標は、周り、そして社会全体の安全安心の確保に参加できる「人創り」に置かれます。
2.「心の教育」の重要性
このカリキュラムが生まれる背景には、長年の少年研究がベースにあります。
非行少年や、少年の規範意識を調査研究した結果、「生命の教育」が、少年が母親の胎内に宿った時から(決して早すぎることはない)学ぶことができる。そして系統的段階的なプログラムが必要である。と「0歳からの心の教育」の必要性を90年代に提示しました。
『0歳からの安全教育』(2006年6月25日発行 佼成新聞)
日本女子大学 清永賢二
子どもへの犯罪を防ぐには、0歳児からの安全教育が必要です。
自分の身を守る力を、安全基礎対体力と呼びます。
0歳児では体力はゼロ。加齢にしたがって基礎体力は増え、
15歳ほどで満たされます。
それまでは、親や周囲の大人、社会がサポートしなければなりません。
たとえば、幼稚園などでは保護者の送迎がありますが、
就学と同時になくなります。
この時「変な人を見たら逃げなさい」と子どもに教えます。
ところが、「変な人」を理解するには、「変ではない人」がわからなければなりません。
つまり、子どもに対して健全な心と態度でいつも見守ってくれる人がどういう人なのかを覚える必要があるのです。
それには、まず0歳から5歳までの間に、親の豊かな愛情が必要です。
母親にしっかりと抱きしめてもらうことを通して、
「人間とは温かいもの」と感じ取っていきます。
人間に対する基本的な信頼感ができて初めて「悪い考えの人もいる」
「変な人からは逃げなさい」という言葉が生きてくるのです。
さらに、愛され大切にされることが土台となって、
友達と仲良くすることを学びます。
これが15歳以上になった時に、「みんなのために私には何ができるのだろう」
と考える基盤となるのです。
このように育った子供は人を愛し、人の痛みを知ります。
犯罪者にはなりにくいのです。
コミュニティーという言葉には、
「一緒に暮らすために私がしなければならないこと」という意味があります。
地域づくりの根本の精神です。たとえ家族でもこの精神がなければ
コミュニティーとはいえません。
安全教育とは、子どもを人間らしく育てる人づくり。
それが安全な街づくりにつながるのです。
ですから、子どもを育てる私たち親のあり方が問われるわけです。
では、コミュニティーの中で親に何ができるか。
「あいさつ」-これしかありません。
一部を除いてどんな犯罪者も必ず犯行現場を下見しています。
近づきやすさと逃げやすさ、見とがめられるか否かという情報を集め、
500メートル、200メートル、20メートルと現場を絞っていきます。
したがって、子どもや自宅を中心とした20mメートル以内で、
知っている人にも見知らぬ人にも「こんにちは」と挨拶をする。
それを犯人はとても嫌がるのです。
また、子どもに逃げなさいと教えるときも、
理論上、まず20メートル逃げればいいことになります。
小学3年生の場合、20メートル逃げるには犯人から
4から6メートル離れている必要があります。
その距離感は、鬼ごっこなどの遊びから学んでいくのだと思います。
まず、親の愛情による人づくり、そして、あいさつ。
地域の一体感をはぐくむことが、安全と安心につながります。